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【お話】百星撩乱(ひゃくせいりょうらん) :: 2011/11/23(Wed)

時折浮かんでくる様々なイメージをお話にしています。
100このお話です。
稲垣足穂のお話からインスピレーションを得たことを、
くれぐれも記載しておかねばなりますまい。

♪今回は第78話、第82話をup
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78話 七晩目の流星
 マダムは書庫の扉を開き、
いろんな色をした星がちりばめられた箱を取り出しました。
見るからに風変わりなそれは幾重にも箱が重なっていて、
目的の場所にたどり着くのにしばらく箱をとりはらい続けなくてはなりませんでした。
 マダムはそんな面倒はいっこう気にならない風で、
ひとつひとつ楽しそうに箱を開けていきました。
最後の箱をあけると、その中にはぎっしりとお星たちがつまっていました。
中には居眠りしているお星もいますし、
絆の強い、意識の高いものもいました。
呑気でつかみどころのないものもあれば、とても美しく光るものもありました。
 マダムのお気に入りのお星たちは少々すり切れていたりもしましたが、
それがまたいい塩梅なのでした。

 マダムはひとつ、お星をとりあげ手のひらにのせました。
何億光年もの遠い銀河の風が、さっとマダムのひたいをなぜました。
はっとしてマダムは一番近くの窓に小走りで走り寄り、
慌てて窓をがたん、と開け放ちました。
そして、
「帰りたいの?」とそのお星に聞きました。
お星は一度強く光りましたが、特にマダムの手から飛び立つ気配はありませんでした。
黙って夜の空気を吸い込み、なつかしげに一服でもしているかのようでした。

 夜の闇がしずしずと部屋に溶け入ってきました。
マダムはあかりを消して、箱の傍の肘掛け椅子に座り、ほおづえをついて考えました。
「どうしたものかしら」
マダムはひとりごちました。
暗闇に満たされたマダムの部屋の中で、お星の箱だけが発光していました。

マダムは考えているふりをしていました。
そしてそのうち、うとうとと眠り込んでしまいました。



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82話 埋め立て地にできた人工海水浴場と水着を来た美女の一軍
  青々とした蓮の葉の上の大粒の水滴が、
池にこぼれ落ちるのを見た日の事でした。
たくさんの蓮の花が夏の日差しのもと、
宇宙に向かってお供えのように咲いていました。

 私は海へ行く事に決めました。
昨日はさんざん硬くって、
彫金で作られた銀細工の鱗鎧(ウロコヨロイ)のようだった私の皮が、
今日に限って「脱皮したい」と言ってきたからでした。
 蓮の水滴が池に落ち、それを目の縁の赤い亀が呑み込みお腹を光らせ、
それに驚いたタガメが間違って年取った緋鯉を刺し、怒った緋鯉が
「いいかげんになされ!」と池のほとりの柳の木をなじったからかもしれません。
わたしがつい柳の木の傍にいたものですから。

 わたしは今年買った蓮色のビキニをバッグに放り投げ、
てくてく一番近い海へと向かいました。
なに、海辺はわたしの部屋からすぐのところにあるのです。
 あちこちにまがい物麦酒のつぶれた缶が捨てられていました。
花火屑もほぼ同じ日数分、そこに佇んでいました。
 ビーチへ着くと驚いた事に人っ子一人居ませんでした。
まだくらげにはうんと早い時分だったはずですのに。
砂の上には陽炎がもやもやとかげっています。

 わたしは砂の上に寝そべり脱皮を待ちましたが、
皮はだまりこくったままうんともすんともいいません。
「あなたのために来たというのに」
わたしは少々恩着せがましくそう言って、
近くの自動販売機でセブンアップを買いました。
 一ブロック向こうのビーチに、
モデルのようにすらりとした水着姿の美女達が群れを作って行進していました。
まるでグラビア撮影のような異常な盛り上がり具合でしたが、
彼女らを撮るカメラマンは誰もいないようでした。
彼女達は連続したポーズをとるかのように楽しげに足をのばしたり、
手でしなをつくったりしながらも、
緊張感などまるで無い様子でケラケラと笑いながら向こうにむかってずんずん
歩いていくのでした。

 わたしは全くやる気を失ってしまったので早々にビーチを後にし、
セブンアップの空き缶を力いっぱいほうって通りの向こう側の屑篭に捨てました。
 帰った後、はさみでこのビーチをパチンと切り取り、
先ほど捨てた空き缶の入った屑篭に入れてやりました。

 似合わない日焼けでひりひりするその日の寝苦しい夜、
わたしのひどく持て余す自身の皮は、
スウェーデンリレーのトップランナーよろしく爆ぜ出すようにするすると、
見事脱皮をやってのけたのでした。


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