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【お話】百星繚乱(ひゃくせいりょうらん) 第1話、第3話 :: 2011/06/08(Wed)

【お話】百星撩乱(ひゃくせいりょうらん)

時折浮かんでくる様々なイメージをお話にしました。
100このお話です。
稲垣足穂のお話からインスピレーションを得たことを、
くれぐれも記載しておかねばなりますまい。

♪今回は第1話、第3話をup
-*-*-*--*-*-*--*-*-*--*-*-*--*-*-*--*-*-*-

1話 集められた少女たち、傍らのむらさきの花

 うす暗い、冷たい床が見えます。
続いてぴたりと揃えられたつま先、
ぎゅっとだきしめられた両膝が浮かんできました。
どうも女の子のようです。
膝の上にうつろな目をして顔をのせています。
そう年端も行かない女の子です。
見ればその子の傍らに一輪、むらさきの花が咲いています。
なんとも形容しがたい光を放っています。
床を今一度確認しても、硬く、無機質な床だので
草花など生えるはずはないのに、やはりその床から生えているようです。
よくよくみると、その子のまわりにも似たような女の子たちがばらばらとい、
それぞれの傍らに種類は違えど同じむらさきをした花が必ず咲いています。

気密性の高い、閉じられた空間です。
女の子たちにはなんの拘束もされていません。
けれどそれは、彼女たちが逃げるはずがない、
というのを知った上での自由のような気もします。
ある子が自分のとなりの花の上に手をかざしました。
花が燃え立つように光を強くしました。
その子は諦めたように手を引っ込め、またうつむいてしまいました。

プシッ、という音がし、分厚い扉が数十センチほど開きました。
外側からの光が、女の子たちの部屋に細長い帯を作りました。
そこに立つ人の影も、部屋の中に長く伸び入り込みました。
女の子たちはその瞬間、全員全ての感覚を研ぎ澄まします。

「見回りだ」その人影が喋りました。
女の子たちは一斉に顔をあげ、逆光で表情の見えない人物の、
目の辺りをじっと見上げました。
皆一様に同じ感情をして、うつろな表情など微塵も残していません。
彼女らの瞳の虹彩は、まるで人の心を見透かし、
深く恥じ入らせるかのような色をたたえています。

毎回この目を見るたび、この見回りの人物は
自分がたじろぐ感覚を覚えるのを禁じ得ないのです。


-*--*-*-*--*-*-*--*-*-*-


3話 鉄ばさみとリネンのクロス、クマの散髪

 『ピッパニケ』という名の雑貨屋さんがありました。
とある国(国名は企業秘密につきここでは明かされません)から
仕入れたかわいらしい雑貨をとり扱うお店です。
ニケさん(雑貨屋さんにはちゃんと名前がありますが、
ここではニケさん、と呼びましょう)
は日当りの良い二階から、日がなお外を眺めつつお店番をしています。
『ピッパニケ』は、ずいぶんと多くのお客さんが出入りする日もありますし、
またそうでない日もあります。
ニケさんはお店をやるうち、今日はお客さんが来る日だとか来ない日だとか、
そういうことがわかるようになってきました。
今日は来ない日のようでした。
ニケさんはおもむろに机の蓋を持ち上げ、中から古そうな木箱を取り出し、
シャキン、と一度音を響かせて、よく切れそうな鉄ばさみを取り出しました。
お昼寝を楽しんでいたぬいぐるみのクマが、ぱちりと目を開け、身震いしました。
ニケさんは、木製のハンガーに掛かっていた繊細なレースの刺繍付リネンのブラウスを、
丁寧に取り外し、ブラウスの両肩の辺りを持って二度ほどぱんぱん、と
洗濯物を干す時のような仕草をしました。
そしてそのリネンのブラウスを、床屋さんのクロスよろしく
寝起きのクマの体にクルリと巻き付けました。
クマは自分のしんぞうの音が高鳴るのを感じました。
ニケさんはかぶっていた自分の帽子の位置を、一度きちんと整えました。
それから鉄ばさみでもってクマの輪郭から2ミリほど離れた空気を、
慎重にカットしていきました。
クマは軍人よろしく背筋を伸ばしたまま、微動だにしません。
手元の狂わないことを願うのみです。
最後のしあげはひげ切りです。
これは鉄のアンティーク風糸切りばさみでもってなされます。
この作業はよほど慎重で、クマのひげから1ミリのところを左右合計6本、切るのです。
すべての作業が終わったとき、ニケさんの顔はやや紅潮していました。
クマの目にはうっすらなみだらしきものさえ浮かんでいます。
ふたりは言葉にならない言葉をかけあいました。

ニケさんは目に見えないクマの伸びた毛とひげを、窓から外に捨てました。
リネンのブラウスは再び木のハンガーにかけられ、日の光に透けて風に揺られています。

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