atoaゆるゆるぶろぐ





スポンサーサイト :: --/--/--(--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. スポンサー広告

【お話】百星撩乱(ひゃくせいりょうらん)第69話、第2話 :: 2011/06/16(Thu)

【お話】百星撩乱(ひゃくせいりょうらん)

時折浮かんでくる様々なイメージをお話にしています。
100このお話です。
稲垣足穂のお話からインスピレーションを得たことを、
くれぐれも記載しておかねばなりますまい。

♪今回は第69話、第2話をup
-*-*-*--*-*-*--*-*-*--*-*-*--*-*-*--*-*-*-

69話 特別に恥ずかしがりやのガス灯、No.667

 人がほぼ寝静まった夜中、”特異な星回りの時分”に、
その通りのガス灯たちはめいめい自分の持ち場を離れ
こわ、ごわ、と地上に降りてきます。
というのも、ガス灯の火たちは恐がりの部類に属するので、
降りていい時間になってもなかなか自分のガラス扉を開けようとしないのです。
一番勇気のあるガス灯がなんとか扉を開け一歩外に踏み出すのを、
隣のガス灯がしかと確認してから、二番手、三番手たちが
おそるおそる扉をあけるのでした。

ボボウ などと音を立てながらガス灯の火は地面にたどり着き、
あたりに不埒な輩が潜伏していないかをよくよく確かめた後、
輪になって踊ったりします。
たまに酔っぱらいが通りがかったりしますが、
その人たちは火の踊りを目の当たりにして
「オレもずいぶん酔いが回ったもんだ」
という思いでしか眺めることはありません。
そういうわけで地上に降りたガス灯の火たちは、
今度は打って変わってしたたかに遊び回り、十分に羽目を外し満足した後、
空が白む頃合いになったら自分のガス灯の中へと戻っていくのでした。

 そんな夜の明けた次の夜、一つのガス灯が点灯し損なっていました。
疲れて寝ているのか、とお隣のガス灯が口笛を吹いて
火のついてないガス灯を起こそうとしましたが、
見るとそのガス灯はそもそも自分の持ち場に帰っていない様子で、
ガラス扉が開いたまま、内鍵も閉まっていませんでした。
そういえば昨晩は点呼を怠ったな、とガス灯のリーダーがすまなそうにいいました。
いえいえ、私も合図を送るのを忘れていたものですから、
と女房役が畳み掛けました。
ガス灯たちはしばしだまりこくりました。

ほどなくして、空にのぼって星になったんだろう、
あいつはそういうところがあったからな、といううわさが、
しばらくの間流れました。
そのガス灯の内鍵は、今もなお閉まっていません。


-*--*-*-*--*-*-*--*-*-*-



2話 ルイの鍵盤

 人間国宝級の職人が、亡くなる間際にピアノを一台作りました。
子どもにも孫にも一番弟子にも、誰にも伝えなかった技術とスピリットをこめた渾身の一台でした。
そのピアノは、幾多の著名なピアノ弾きたちの手を経たのち
一人の金持ちの気まぐれで、ある家庭の居間に置かれることになりました。
どんなに有名なピアノ弾きも、このピアノの本当のひみつを知りませんでした。

ルイという少年がその家にいました。
ブルボン朝の好きな両親によってそんな名前がつけられた男の子でした。
ルイは「何かにつけてむつかしい子ども」の称号を、
先生からも両親からも授けられていました。
彼はその称号を勲章にして、いつも左胸にピンでとめて歩きました。

ルイのお母さまも一流のピアノ弾きでしたので、
時折そのピアノをさざ波や水しぶきのように弾いて、
招いたお客さまたちを魅了しました。
それを聴きながらルイは「だまされないぞ」と強く目を光らせました。
そして鍵盤が沈んだり浮いたりトレモロしたりするのを、
後ろから横から執拗に観察して回りました。
お母さまはそんなルイに「ちょっと頭痛がするわ」といって
ずつうやくを取りに居間を出て行くのでした。

ある日ルイはお母さまの居ない隙を見計らってすばやくピアノの椅子に座り、
鍵盤を押してみました。
となりの鍵盤の木の壁面が見えました。
他の鍵盤を押してみました。その鍵盤はルイをばかにしたような音を立てました。
ルイは真っ赤になりながら、何度も何度も押しました。
そのうち、ルイの耳の中によい音がしました。
ルイはこの音は好きだ、とおもいました。
そして自分が好きな音が出せるまで、幾度となく鍵盤を押しつづけました。
しばらくしてルイは「見破ったぞ」とおもいました。
ルイは鍵盤の上に(まるであたためるかのように)両方の手のひらをおいて、
ずっと静かにしていました。
 それからちいさなお顔をピアノの鍵盤に寄せて、
鍵盤と鍵盤のかすかな隙間にその生意気そうなお鼻を近づけ、
ひとつずつ、すうっと音を立てて匂いを嗅いでいったのでした。
途中で左胸のピンと勲章がじゃまになったので、
それを取り外してそばに置き、作業を続けました。

ピアノは静かにルイの呼吸を聞き、久方ぶりに自分たちを作った職人のことを懐かしみました。

ピアノはその晩、お父さまとお母さまの長い長い話し合いの末、
どこかの家にひっそり運ばれていきました。


スポンサーサイト
  1. 制作・作品
  2. | trackback:0
  3. | comment:0
<<【お話】百星撩乱(ひゃくせいりょうらん)第26話、第35話、第77話 | top | 紫陽花ハンティング -hydrangea hunting->>


comment

comment


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://atoa45.blog52.fc2.com/tb.php/103-f5915035
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。